法人設立時の口座開設は審査が厳しいので事前確認を
法人設立時に銀行口座は簡単には開設できません
法人名義の口座が不当請求詐欺等の犯罪に利用され、消費者被害が拡大等しており、大きな社会問題になっていることを背景に、金融機関には法令等により、預金口座開設時の手続きの厳格化が求められています。個人が銀行口座を開設する場合には店舗に行けば当日銀行口座を開設できることが多いと思います(個人も以前よりは審査が厳しくなっています)が、法人口座の場合にはそんなに簡単には開設できません。これまで弊所に法人設立の前後にご相談に来られる方の多くがこのことを知りませんでした。法人設立の際には銀行口座がないと取引に支障が出るかと思いますので、法人設立をする数カ月前から法人口座を開設したい銀行で口座が開設できるか事前に調べておく必要があります。
法人口座開設に必要な書類とは
今回この記事を書くにあたって、ゆうちょ銀行、メガバンク、地方銀行、信用金庫、ネット銀行の法人口座開設の案内ページをいくつか確認しました。
法人口座開設にあたって一般的に必要とされるのは下記の書類です。ネット銀行ではこれらの中のいくつかが不要なケースもあります。
【公的書類】
・ 法人の履歴事項全部証明書
・ 法人の印鑑証明書
・ 取引担当者(ご来店者)の方の公的な本人確認資料
・ 代表者、実質的支配者の方の公的な本人確認資料
【その他】
・事業内容がわかる資料(例:会社案内、商品パンフレット、ホームページ、他社への提案資料、商品企画書、各種契約書、他社の請求書、発注書、納品書)
・口座開設依頼書
また金融機関によっては、下記等も求めるケースがあります。状況によってはこれ以上のものも求められるケースもあります。
・本店・主たる事務所の建物登記簿謄本(自己所有の場合)または賃貸借契約書(借家の場合)の写し等
・ご来店者と法人の関係を証する書類(委任状等)
・許認可・届出・登録等が必要な業種の場合には許認可証の写し等
・法人番号通知書等
※証明書の発行日が3か月以内か6カ月以内かなど金融機関により異なります。
私が確認した中ではネット銀行のGMOあおぞら銀行が必要とされる資料についてどのように準備しておくと通りやすいかを一番明確に示していたと思います。
審査に落ちやすいケース
基本的に実態があることを確認するので、審査の書類上で下記のようなケースは落ちる原因になることもあると思われます。ネット銀行に関しては下記の場合でも審査が通るケースはそれなりにあるようです。
・資本金が少なすぎる
・シェアオフィスを利用している
・固定電話がない
・事業目的が不明確
・代表者等の経歴が不透明
・事業実態を示せるものがない
どういう金融機関だと銀行口座開設をしやすいのか
各金融機関に案内されている情報を私なりにまとめると下記のようになります。なお審査の通りやすさは私が各顧客や同業者、ネットの記事から確認したものを私が判断した主観的なものです。もちろん同じ金融機関種別でも各金融機関ごとにことなります。またこの表全体としても私の主観が入っている点はご承知おきください。必要資料が多い、審査期間が長い金融機関は一般的に審査が厳しいと思われます。「希望金融機関名 法人口座開設」などで検索して出てくる各金融機関のホームページにて必要資料や手続きは事前にご確認ください。この記事で一番伝えたいことはこのことです。
金融機関種別 | 必要資料 | 審査期間(HP掲載) | 審査の通りやすさ(主観的なもの) |
ゆうちょ銀行 | 多い | 平均1か月程度 | ゆるめ~やや厳しめ |
メガバンク | 標準的~多い | ~1か月程度 | やや厳しめ~厳しめ |
地方銀行大手 | 多い | 2~3週間程度 | やや厳しめ |
地方銀行中堅 | 標準的 | 2~3週間程度 | ややゆるい |
信用金庫 | 標準的 | 2週間程度 | ややゆるい |
ネット銀行 | 少なめ~標準的 | 最短当日から10日程度 | 最もゆるい |
弊所はクラウド会計freeeを導入している会社が多いので、そういった会社ではネット銀行を利用しているところが多いです。freee会社設立ではGMOあおぞら銀行とタイアップしており、会社設立とほぼ同時に口座開始が出来たり、その他のネット銀行などをfreeeのページから申し込みができたりもします。また弊所の顧客の中では設立時から地方銀行大手や中堅などでも銀行口座開設をできている法人ももちろんあります。事業の実態が証拠資料として提出できているからと思います。現状地方銀行などの審査が厳しめになっていることを踏まえると、事業実態の証拠資料がそろえられなさそうなケースでは安全のために審査の最もゆるいネット銀行の口座を開設し、設立後の取引に支障がないようにされたほうが良いと思います。希望の銀行等で設立時に口座開設ができなければ、設立後に事業の実績が出てから、必要があれば地方銀行の口座等を開設するのもよいかと思います。ただしネット銀行の場合には銀行によっては社会保険料などの各種口座振替に未対応なこともあるので注意が必要です。
銀行口座開設を円滑にするには
ゆうちょ銀行やネット銀行の場合は、1つのセンターなどで集約して審査を行っています。また店舗のある一部の銀行でもネット受付の申込を開始しています。ただ一般的な店舗のある銀行や信用金庫の多くは申し込んだ店舗で審査されると思います。もしサラリーマン時代や個人事業者で昔から取引のある銀行や信用金庫で担当者や知っている方がいればその方を通じて法人口座の開設の相談をすれば、窓口で申し込むよりも審査がスムーズにいくと思われます。代表者等の過去の取引実績があれば、それは審査において十分にプラスに働く可能性があるからです。また希望の銀行の担当者を紹介してくれる方がいれば、窓口に直接一人で行くよりかは審査が円滑に進む可能性が有るかもしれません。