消費税不正受還付が横行し審査が厳しくなっています
輸出で消費税が還付される仕組み
消費税は取引の各段階で課税され、商品やサービスなどの最終消費者が実質的に負担する仕組みです。課税売上げに係る消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除する「前段階税額控除方式」が採用されており、課税仕入れに係る消費税額が課税売上げに係る消費税額を上回る場合は、還付を受けることができます。消費税の課税事業者が課税資産の譲渡等のうち、輸出取引等に該当するものについては、消費税が免除されます。仮に輸出売上しかない場合には、売上げに係る消費税額は0となるため、課税仕入れに係る消費税額が課税売上げに係る消費税額を上回るので、消費税の還付を受けることができます。
なお還付を受ける場合には、本則課税(原則課税)を採用している必要があります。簡易課税制度を選択している場合には、仕入額を売上額の一定割合とみなして、受取った消費税から控除できるしくみなので、課税仕入れに係る消費税額が課税売上げに係る消費税額を上回ることがないからです。
近年消費税の不正受還付が横行しています
税務通信の2022年6月20日号に「国税庁が全国税局に還付審査の対応強化を指示」という記事が掲載されました。2019年10月の消費税率引上げなどで、消費税の還付申告は件数やその金額ともに増加傾向のため、還付申告に対する当局の対応が示されています。中でも輸出免税売上に関する不正還付事例が多発しています。
2022年12月11日の読売新聞のニュース「消費税不正還付、追徴25億円の貿易会社も…福岡国税局管内が4割占める」(リンク切れの際はご了承ください)などで、消費税不正還付が広く報道されました。不正還付に関する全国の追徴税額は2022年6月までの1年間で約111億円に上り、このうち福岡国税局管内では、福岡県内の貿易会社が重加算税を含む約25億円を追徴課税されたことが判明しています。輸出するための仕入れ額と、輸出先の売上高をともに水増しして、虚偽の確定申告書を税務署に提出し、不正に消費税の還付を受けていたとのことで、悪質な仮装・隠蔽行為と判断されています。近年こういった不正がかなり横行していたようですが、残念ながら地元の福岡国税局管内の不正総額は全国の追徴税額の約4割になるなど極めて突出しています。最近は私の顧問先でも輸出還付されるまでに税務署の審査がかなり厳しくなっているのを実感します。これまで以上に提出資料の要求が多くなりました。不正な取引はしていなくても、輸出還付を受けるための書類などの整理や保管などは厳格にしておかないと、あとあとになって輸出免税が認められないなどになりかねません。十分にご留意ください。